2015年5月23日、市立池田病院での第14回 五月山緩和ケア研究会に行ってきました。

『がんと診断されたときからの緩和ケアの充実をめざして~看護の役割を中心に~』という演題で

京都大学の田村恵子先生が講演してくださいました。

癌と診断され告知された時期から、緩和ケアの導入をスタートする

それこそが理想的な緩和ケアのタイミングであると、以前から思っていました。

癌と告知された時点あるいはそれ以前から、患者さんやご家族は身体や心、経済的なことを含め様々な問題に直面します。

早期からそれらの問題やつらさを和らげるために、緩和ケアを開始することは大変重要でしょう。

ただ緩和ケアを早期に導入することの重要性はわかっていても、いかにそれを実現するのか、

そのヒントが見つかるのを期待し、会に参加しました。

早期に緩和ケアを導入することで、

いずれ在宅での緩和ケアを希望される患者さんが、病院での治療から在宅での緩和ケアにスムースに移行することができる、

と考えます。

というのは、

癌末期の患者さんが最期を自宅で過ごしたいと希望し退院・帰宅されても、

すでに病状は限界まで進行しており、自宅で過ごせたのはほんの数日しかなかった、という経験をこれまでにたくさんしてきました。

あるいは癌の治療のため病院に通院されていた患者さんが、病状が進行したためにこれ以上の抗癌剤の治療ができなくなり、

在宅緩和ケアに紹介されてくることがありますが、

その時点で在宅介護・看護のケアがいまだ導入されておらず、慌てて在宅での介護環境を整える、と言ったことも少なくありません。

これでは患者さん・ご家族は最期のゆっくりとした時間を過ごすことができず、満足していただけるのは困難です。

また在宅に関わる介護・看護・医療のスタッフにとっても、疲弊するばかりとなります。

これらは病院での緩和ケアの機能が十分に働いていたとは到底考えられず、理想とはかけ離れたものでしょう。

私見ですが、緩和ケアの在り方として、以下のポイントが重要と考えます。

1. 癌と告知された時点から、病院での緩和ケアチームが介入し、

  患者さんやご家族が抱える身体や心、経済的なことを含めた様々な問題に支援・対応する。

2. 患者さん・ご家族に、介護制度・在宅看護・在宅診療に関して早期から認識してもらえるよう、緩和ケアチーム・地域医療が働きかける。

  患者さん・ご家族の希望があれば、病状に応じて介護サービス・在宅看護を導入し、在宅でもしっかりとサポートする。

3. 残念ながら病状が進行した場合に備え、ホスピスを含めた病院への事前登録を済ましておく。

  あるいは在宅緩和ケアを希望する可能性があるのなら、

  在宅支援診療所に事前面談しておく(あるいは病院に通院しながら、在宅支援診療所にも通院する)。

  そうすることで、在宅緩和ケアへスムースに移行するための関係を構築する。

但し、上記のような緩和ケアを実現することは、現実的にかなり困難な状況であると言わざるを得ません。

実現するためには、

疼痛コントロールをはじめとした身体症状の緩和に関する医療的な技術・知識およびコミュニケーションスキルを身に付けることが大前提ですが、

それらがクリアーできたとしても、

病院のマンパワーの問題や医療制度の問題を解決し、医師・看護師をはじめとする医療者の意識を改革する必要があり、

それには時間をかけて社会・医療業界全体の土壌を熟成させる必要があると考えます。

(病院のトップダウンで、『癌と告知されたすべての患者さんに、緩和ケアチームが必ず関与する』という劇的な改革をすれば別ですが….。)

今回講演してくださった京都大学の田村先生のところでさえ、実際には緩和ケア早期導入のシステムは残念ながらいまだないそうです。

私共は今後も講演会などを通じて、緩和ケアに関する認識を社会・医療者に広めていけるよう、一歩ずつ非常に地道ですが努力を続けていく決意です。

さくらホームケアクリニック院長 久保雅弘

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